在宅介護は住宅環境で決まってしまう【介護リフォームで役立つ8つのポイント】

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車いすが通れないくらい玄関の幅が狭い、廊下が狭い、自宅の3階に高齢者が寝ているなどの条件の場合、まず外に連れ出すということがかなり難しくなります。
筋肉ムキムキの介護者なら担いで移動できるかも知れませんが、なかなかそういった人はいないでしょう。
在宅で介護したくても、住宅の間取りの問題で介護ができないケースが存在します。
そうならないためにも、介護が始まる前に住宅のリフォームをおすすめします
土地、借家、金銭的な理由でリフォームできないなどの事情もあるかと思いますので、
万人向けの記事ではないですが、今後リフォームを考えているという方の参考になればと思い書いています。

目次

仏間での祖父の介護

25年ほど前の話になりますが、祖母が祖父を自宅で介護しておりました。
ストーブもコタツもない仏間で祖母は一人で介護していました。
祖父は頭がしっかりしていたので、ポータブルトイレでは出るものも出ない様子だったそうです。
そんな状況を見ていた父は、祖父の他界後に家のリフォームをしました。

祖父の介護から学んだ介護リフォーム

リフォームしたのは玄関と、祖父がやっていたお店の場所を改造した祖母の部屋の作成です。
玄関の段差を少なくし、玄関のすぐ隣に祖母の部屋を作り、
車椅子が通れるようバリアフリーにし、部屋の中にトイレと水道(お湯も出る)を設置しました。
父も祖母が祖父の介護をするのを見ていて「これは必要だ」と思うものを用意したのでしょう。

ちなみに我が家は築45年ほどの古い家で、建設時にはバリアフリーはおろか家の中は段差ばかりでした。

孫目線では

リフォーム当時、僕は部屋の中にトイレが必要なのかと疑問に思いましたが、
祖父の介護から父はトイレ介助の大変さを知っていたのでしょうね。
実際に現在、祖母の介護をしていて、もし部屋の中にトイレがなかったら大変だろうなと思うことは多々あります。
特にウォシュレットは良いですね。
ですので、是非この介護部屋のリフォームのお話をしておかなくてはと思い記事にしました。

健康な内でもリフォームするメリットは多い

このリフォーム時には祖母はまだとても元気でしたが、膝が痛く、
短距離なら歩きで、長距離なら這って移動しておりました。
そういった状態だったため、自分専用のトイレのことはとても気に入ったらしく
「ベッドからトイレが近くていいぞ~!」と喜んでおりました。

間取り

祖母の部屋の間取り図を載せておきますね。

(画像が用意できていないので、もう少しお待ちください)

部屋の中にトイレがあります。
昭和前半生まれの方にとって部屋にトイレがあると臭くないの?と思われるかもしれませんが、
最近の水洗トイレは便が水没して臭いを出しにくい構造になっているのと、
便座に消臭機能もついていて、流した後20分もすればほぼ気にならないレベルです。(個人差はあるでしょうけど)
おそらくポータブルよりかは遥かに臭わないです。
ウォシュレットも使えて衛生的(これはとても大切)ですし、ヒーターも付いてます。
何よりベッドから近いことと、同じ部屋にあるので温度差が無いのがメリットです。

介護リフォームをする上でのポイント

数年介護してみて、リフォームする上で特に気を付けた方が良いポイントがいくつかあります。

1.ベッドが入るスペースの確保
2.車椅子と介護者が通れるスペースの確保
3.トイレと手洗いを近くに設置する
4.エアコンを設置する
5.床はフローリングにする
6.テレビを設置する
7.ドアは引き戸が良い
8.ベッドに光が届く間取り

いくつか優先順位順にポイントを挙げてみました。

一つ一つ解説していきます。

ベッドが入るスペースの確保

ある程度歩けているうちは寝室が別室という場合もあるかもしれません。
介護部屋では介護度の低い時期から、寝たきりの時期まで利用することを想定して作りますので、
ベッドが入らないくらい狭い部屋では意味がありません。
特に寝たきりになれば、ベッドの上でほとんどの時間を凄すので、ベッドが入るというのは必須の条件です。
ベッドの大きさについては、ある程度自分で寝がえりが打てる、自力でベッドから降りてこれるうちはダブルでもいいのですが、家族やヘルパーさんによって寝返りを打たせる必要がでてくると、シングルの方が都合がいいです。
よって最低でもシングルのベッドが入って、その周りを歩けるくらいの隙間があることが理想です。

車椅子と介護者が通れるスペースの確保

自力歩行ができるうちは、わずかな隙間でも出入りできますし、
つかまり歩きをするため、ある程度狭い方が良い場合もあります。
しかし、車椅子での移動がメインになってくると、ドアやベッド横までの動線は車椅子が通れる程度の幅が必要になってきます。
さらに車椅子を操作する家族の立ち回りについても考慮する必要があります。
介護者は車椅子は押すときは車椅子の後ろ側にいますが、お年寄りを下す(移乗)させる時は車椅子の前に回ります。
したがって車椅子の周りをぐるりと回れる程度のスペースが必要になります。
高齢者や家族の体型にもよりますが、動線の幅は最低でも1.2メートルくらいは確保したいところです。
将来ストレッチャー(寝たまま搬送する台)を導入するならさらに広く動線を確保する必要があります。

トイレと手洗いを近くに設置する

すでにトイレを室内に設置した方が良いとお話ししましたが、これはとても重要なことです。
人間が生きていく上で、寝る、食べる、排泄、この3つは絶対に避けて通れない日課です。
寝ることに関してはベッドが入ってしまえば、その後は大きな問題はないと思います。
場合によってはマットを変えたりクッションをかったりと、対応ができます。
次に食べることですが、これは車椅子の上で食べても良いですし、ベッドサイドやベッドの上で食べても良いです。
問題は排泄です。 動けなくなってくると、おむつで排泄管理をするようになりますが、
いつからおむつで排泄をさせるかは非常に難しいです。
何より本人がトイレでしたいと思っているかもしれないのです。

少し余談になりますが、僕が赤ちゃんだった頃、親におむつを替えて貰うのが嫌で自力でトイレに行こうとしていた記憶があります。
それは恥ずかしいからというよりも、迷惑を掛けてはいけないという気持ちがあったのです。
赤ちゃんにそんな感情はないと思われる方もいるかも知れませんが、
言葉にできないだけで、色んなことを思っているのです。

高齢者だってきっと同じです。
言葉にできなくなっても不快感があり、羞恥心があり、遠慮だってあるのです。
だからなるべく排泄はトイレでさせて上げたいと考えています。

それにトイレを利用するメリットは他にもあります。
もし、おむつに排泄したとしても、お尻を洗う必要があります。
陰部洗浄と言いますが、これをベッドの上でやるのはなかなか大変なんです。
もしトイレが近く、座っていられるくらい体力があるなら、トイレで洗った方が介護をする方は楽です。
陰部洗浄の達人クラスになると、ベッドの方が楽と言うかも知れませんが、
僕の場合、トイレでウォシュレットと洗浄用のボトルを使って洗った方が楽です。
少し長くなってしまいましたが、トイレをベッドの近くに作ることで、長期間にわたってトイレを利用することが出来るのでおすすめです!

エアコンを設置する

高齢になると、体温管理が非常にシビアになります。
部屋の温度がダイレクトに体温に影響します。
我が家ではエアコンは一年の大半の時期で常に運転したままです。
エアコンは部屋をリフォームする段階で、どこにつければ良いか検討しておく必要があります。
エアコンが付かない壁もありますし、コンセントの位置、室外機への管を通す必要もあります。
事前に業者さんに相談しておくと良いでしょう。
高齢者に直接冷機がかからないような場所が理想ですが、これは設置後の工夫で改善できます。

床はフローリングにする

床はフローリングか畳かと言われれば、フローリングがおすすめです。
介護をしていると食事中にお茶をこぼしたり、便で汚してしまうこともあります。
畳の場合、すぐに拭いてもシミが残ったりしますが、フローリングであればその心配も少なくなります。
そういった焦りも介護のストレスに繋がってしまいますので、フローリングをオススメします。
また、車椅子を使う上でもフローリングの方が走行しやすいです。

テレビを設置する

寝たきりになると楽しみと言えば、食事とテレビがほとんどです。
テレビ番組によっては良い心理的な効果も期待できますので、テレビはなるべく見せてあげたいものです。
ただ、部屋の大きさの都合からテレビを設置する場所がない場合もあるかと思います。
そういった場合、テレビを壁掛けにしてしまうのも良いでしょう。
壁掛けにするにあたって、壁の中の柱の位置も需要になってきますので、
リフォーム前の設計の段階で、テレビを壁に掛けたいことと、だいたいの設置位置を伝えておくと良いでしょう。

ドアは引き戸が良い

部屋のドアは開き戸よりも、引き戸(スライドドア)がおすすめです。
その理由ですが、一つは車椅子を操作したまま、開閉がしやすいことです。
開き戸は引いて開ける場合に、ドアが開いても車椅子に当たらない位置に、車椅子を停車させ、
介護者がドアを開き、再び車椅子を押して中に入ります。
中に入っても、ドアを閉めるために再び車椅子から離れる必要があり、
この一瞬のすきに高齢者が立ち上がろうとして転倒するリスクがあります。

引き戸はレールが必要になりますが、バリアフリーにしたいと工事業者に伝えれば、
突起のないV字レールにしてくれると思います。
(V字レールはホコリが溜まりやすいのが欠点ですが、転倒のリスクは少なくなります)

こういった理由から引き戸がおすすめだと考えています。

ベッドに光が届く間取り

人間は日の光を感じて体の状態を調節する機能があります。
脳の中のセロトニンという物質は日の光を浴びることによってより多く分泌されます。
セロトニンは精神の安定や、やる気に関係するホルモンなのですが、
これが不足すると朝起きられない、無気力などうつ病に似たような症状が出やすくなるのです。
特に高齢になるほど脳の機能が失われていきます。
そうなると本人は思うように動けないことへの不安を抱えることになります。
その不安はかなり大きなものです。
我々でいえば身体の一部を損傷するほどの不安だと想像できます。
そんなとき、セロトニンが多く出ていればまだいいのですが、
このセロトニンも脳の機能が失われると少なくなってしまうのです。
つまり高齢になるほどうつ病のリスクが高まるということです。
アメリカの研究では老人ホームに暮らしている高齢者の5人に1人はうつ病だという統計データもあるほどです。
日本ではまだまだ高齢者のうつ病に対して取り組みが遅いですが、うつ病になることで、
本人の生活の質が下がります。
これは本人にとっても不幸なことですが、それを見守る家族にとってもとても辛いことなのです。
「高齢だから仕方ない」ではなく、「高齢だから特に気をつけたい」問題です。
ですので、なるべく日の当たらう環境で暮らして貰えるよう、ベッドに窓の光が届くような設計になることが理想だと考えます。

 

以上、我が家の介護をしていく上で気が付いたところを交えて、
気をつけたいポイントをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
すべてクリアするのは難しいかも知れませんが、参考にして頂ければ幸いです。
ちなみに我が家では、車椅子の動線が十分に確保できておらず、
我々家族は車椅子の周りを小さくなって移動したりしています。

本当はハウジングメーカーから提案して欲しい

家を建てるとき、施主さんはまだお若く、介護のことはあまり考えていないかも知れません。
これは無理もないことです。
ですので建築業者さんや工務店さんなどから、子供部屋と同じように、
介護部屋について提案して頂けるといいなって思います。

介護するタイミングは突然やってきます。
そのときはもう大きなリフォームができないような状況になってしまうのです。
せめて新築時に将来介護部屋になることを想定し、下水や上水を部屋まで引いておき、
必要になったら少しリフォームして介護部屋になるように作ってもいいでしょう。
そういったアイデアを業者さんから提案して欲しいのです。

介護はまだまだ未開のジャンルで、効率化が研究されていません。
僕はこういったノウハウを多くの人達と共有して、在宅介護の負担をなるべくするような住宅が広まっていくと願っています。

新築やリフォームには沢山のお金が掛かります。
全員ができることではないですが、もしこれから家を建てたり、リフォームをされるという方の参考になれば嬉しいです。

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この記事を書いた人

1982年生まれ。 おばあちゃんに可愛がられて育つ。
脳梗塞で介護度5になってしまったおばあちゃんの介護を通して、感じたことを発信しています。

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