東京消防庁によると、熱中症による救急搬送の約半分(53%)は65歳以上の高齢者で、さらに発生場所で一番多いのは自宅を含む居住地(全体の40%)というデータがあります。
引用:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/202005/heat.html
高齢者にとって夏はどこに居ても命の危険と隣り合わせの季節。
それなのに「家の親はエアコンを使ってくれない!」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこには高齢者なりにエアコンを使わない理由があるようです。
エアコンを使ってくれない高齢者を3タイプに分けて、どうやったらエアコンを使ってもらえるか考えてみましたので、お伝えしたいと思います。
この記事は高齢の親がエアコンを使ってくれなくて困っている人向けの記事となっています。
例外について先にお話ししておきますと、ご本人に認知症が疑われる場合や介護度(要支援)の判定が付いている方に関しては、本人ではなく周りの方が温度管理をしてあげてください。
近年では夏の温度管理は命に関わる問題です。 本人の努力にゆだねるのではなく、ご家族やヘルパーさん、訪問看護さんと連携をとってしっかり管理してください。
その上でこの記事がお役に立てることがあるかも知れませんので、読んで頂ければ幸いです。
エアコンを使わない人は3タイプに分けられる
エアコンを使わない人を観察すると以下の3つのタイプが存在することに気が付きました。
- 電気代が心配で使わないタイプ
- エアコンの風が気持ち悪いから使わないタイプ
- そもそも暑いと感じていないタイプ
タイプ別に分けてみましたが、それぞれ言い分があり、さらに複数のタイプにまたがっている場合もあります。
タイプごと言い分を聞いてみて、どう対応したらベストか考えてみました。
電気代が心配で使わないタイプ
「エアコンは電気代が高いから使いたくない」という高齢者は多く居ると思います。
やはり物のない時代に生きてこられた方にとっては、エアコンは贅沢品というイメージは仕方のないことです。
そう心配している高齢者には、実際にエアコンの電気代がいくらかかるのか提示して安心して貰うのが一つの方法だと思います。
1日にかかるエアコン(冷房)の電気代は132円
先に結論を言いますと、1日のうち12時間エアコン(冷房)を使った際にかかる電気代は132円です。(24時間使用で318円)
改めて数字を見るとかなりお安いのです。
12時間としたのは、高齢者の場合、時間を決めて使って貰うのが良いかと思い、朝の10時から夜の10時までクーラーを使うように決めてしまった方が使いやすいかと考えたからです。
夜中はエアコンを切って良いのかというと、本当は夜中もエアコン使って欲しいのです。
と言いますのも、夜中の寝ている間に熱中症になる高齢者も多いので、寝苦しい夜は一晩中エアコンを入れた方がいいのは間違いないです。
これはあくまで、普段エアコンを使ってくれない高齢者が、自主的に使い始めてくれるまでの処置だと思ってください。
親御さんに「朝の10時から夜の10時までエアコンを使っても電気代132円だよ。 ジュース1本分だよ」と誘導してみてはいかがでしょうか。
脅かすのは良くないですが、熱中症になって入院ともなると、出費は数万円となりますので、予防することが一番の節約だったりします!
なお、この数字はエアコンの機種や住環境によって大きく変わってきますので、あくまで試算ということで最初にご理解頂ければと思います。
では、この132円の試算方法と根拠についてお話しします。(難しいので飛ばして読んで頂いて大丈夫です)
電気代を計算する2種類の方法
エアコンの電気代を算出する方法は大きく分けて2つ。
期間消費電力量から割り出す方法と、消費電力から割り出す方法があります。
期間消費電力量から割り出す方法は、メーカーでも「このエアコンは1年の電気代が○万円ですよ」とうたうのに使っている方法です。
しかし、算出条件が厳しく、一般家庭でエアコンを利用した場合の電力代とは大きく異なってしまいます。
もう一つの消費電力から電気代を割り出す方法も、部屋の気密性や外気温の変化などが考慮されていないため、やはり正確な数字とは言えません。
ですが、あえてどちらかで算出するなら、消費電力から算出した方が、実際の電気代に近い数字になると思います。
というわけで今回は消費電力から電気代を計算してみたいと思います。
エアコン(冷房)の電気代を試算してみよう
今回試算に使ったエアコンはパナソニックのCS-X221D(6畳用)です。
スペックは以下の公式サイトから参照しています。
パナソニック CS-X221D スペック
https://panasonic.jp/aircon/p-db/CS-X221DS_spec.html
冷房時の消費電力は425(110~920)Wとなっています。
425が定格消費電力で、110が最低消費電力、920が最大消費電力です。
電気代の計算には定格消費電力の425Wを使います。
電気料金は東京電力の120kWh~300kWhまでの電気料金が26円48銭なので、銭以下を切り捨てて、26円を電気料金とします。
では、定格消費電力が425Wで、電気料が26円で計算してみます。
計算式
425W ÷ 1000 = 0.425kW
0.425kW × 26円/kWh = 11.05円
11.05円が冷房1時間あたりの電気代です。
この数字をもとに1時間、1日、1カ月の電気代を計算してみます。
期間ごとの電気代
1時間の電気代は11.05円
1日(12時間使用)の電気代は132.6円
1カ月(30日計算)の電気代は3,978円
という結果になりました。
エアコン(冷房)を1日(12時間)使っても電気代は132円ということが分かりました。
ジュースに換算すれば約1本分程度です。
もし高齢の親後さんが「エアコンは電気代が高いから使わない」とおっしゃるようでしたら「エアコンの電気代は1日132円だから安心して使って」と教えてあげてください。
「そのくらいなら使おうかね」と思ってもらえればラッキーです!
132円を高いと思うか、安いと思うかは人それぞれですが、
熱中症は命に関わることですから、これは必要経費だと思ってください。
そしてどうかご家族が気にかけてあげて頂きたいです。
(ちなみに冷房使用時の電気代より、暖房使用時の電気代の方がお高いです!)
電気代を安く抑えるために
電気代を安く抑えるには、最新の高気密住宅に住むのが良いのですが、なかなか高齢者が家を新築するというわけにもいかないと思いますので、これは現実的ではないです。
もうちょっとお手軽に少しでも電気代を安くするたもの方法がいくつかありますので、ご紹介しますね。
エアコンを買い替えるよりも掃除が大切
エアコンは年々改良がくわえられており、10年以上前のエアコンを使っている方はエアコンを買い替えることで電気代を節約することができます。
どのくらい安くなるかというと年間で数千円程度電気代が安くなると言われています。
ですが「数千円の電気代を抑えるのに、数万円のエアコンを買うのはどうなんだろう」と僕は思うわけです。
何年後かには元が取れますが、それを節約と言えるのか微妙な感じです。
それよりも、エアコンのお掃除してください!
エアコンのフィルターをお掃除したことない方、意外と多いのではないでしょうか?
エアコンにはホコリを吸わないようにフィルターが付いています。このフィルターを掃除するだけで電気代の節約になります。
以下、経済産業省のホームページからの引用になりますが
フィルターが目詰りしているエアコン(2.2kW)とフィルターを清掃した場合の比較
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/airconditioning/index.html
年間で電気31.95kWhの省エネ、原油換算8.05L、CO2削減量15.6kg
約990円の節約
フィルターのお掃除をするだけで、年間990円の節約になるそうです。
一般的なエアコンであればフロントカバーを開けて、フィルターを取り外して掃除機でほこりを吸うだけなので簡単です!(詳しくはエアコンの取扱説明書を参照してください)
高所作業なので、足元に気を付けてくださいね。
一度も掃除したことがない人は、是非お掃除チャレンジしてみてください。
一方、お掃除ロボットが付いているタイプのエアコンがちょっとくせ者で、こちらは業者さんを頼んでお掃除して貰うことをおすすめします。
我が家の失敗談なのですが、うちのエアコンもお掃除ロボットがついているタイプで、付属のダストボックスを掃除するだけでよいとのことだったので、ダストボックスのみ外して定期的に掃除していました。
しかし、ある時エアコンの効きが悪くなってしまいカバーを開けたところ、中がホコリだらけになっていました。
結局、エアコンを分解して水洗いしましたが、なかなか苦労しました。
お掃除ロボット付きのエアコンの掃除は、DIYに自信がない人は業者さんに依頼した方がいいです。
電力会社を見直してみる
もう一つの電気代をお安く抑える方法は電力会社を見直してみるです。
2016年4月から電力の自由化にともない、電力会社を自由に選べるようになりました。
CMなどでソフトバンクや楽天が電気を売っているのを見たことがあるかも知れません。
我が家では長年、中部電力を利用していましたが、地元のガス屋さんがやってる電力事業に切り替えてお得に使っています。
ガスと電気と両方入るとお得なタイプのプランです。
(ローカル企業なのとプロパンガスとセットなため全国区でおすすめできないのが残念ですが)
そんな感じで、いろんな会社が特色のある料金プランで新たなビジネスを始めていますが、
中でもLooopでんきは、全国区で展開しているのと基本料金と燃料費調整額がずっと0円の電力会社で、世界情勢が不安定な現在においてお得な電力会社です。
実際に電気料金がどのくらいお安くなるか、Looopでんきのサイトに、
大手電力会社(東京電力、関西電力、中部電力など)との比較が掲載されているので以下に引用します。
画像はLooopでんきと東京電力との比較です。
4人世帯で試算すると、2023年3月使用分を比較しても、-3,786円!!
東京電力エリアでは、3月に使う電気の量と、8月に使う電気の量はほぼ同じくらいなので、夏の電気使用量の参考になるかと思います。
電力会社を変えるのはなかなか大きな決断かも知れませんが、良く調べて納得した上で乗り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
Looopでんきのサイトに料金シミュレーションがあり、お住まいの電力エリアと世帯数を入力すれば簡単に比較できます!
現在、大手電力会社と契約しているのであれば、料金シミュレーションだけでも試してみる価値ありです!(もちろん無料です)
基本料金・燃料費調整額・解約手数料0円!
まずは料金シミュレーションをお試しください
エアコンの風が気持ち悪いから使わないタイプ
「エアコンの風が気持ち悪いから使わない」と言ってエアコンを使わない高齢者も多いです。
そういう僕もエアコンの風が苦手であまり使いたくない人です。(使いますけど)
体が熱い時は涼しい風はありがたいのですけど、体がクールダウンした後も冷やし続けると不快ですよね。
では、冷房使用時にエアコンから何℃の風がでているのでしょうか?
実際に計ってみました。
エアコンの送風口から出る風の温度は10℃
この日は外気温が38度近くあり、エアコンの設定温度は23℃で運転していました。
試しにどのくらいの温度の風が出ているのか計ってみると、
送風口あたりの温度は約10℃でした。(拡大してみます)
見えにくいですけど、10.1℃と表示されています。
エアコンから出る冷風は10℃であることがわかりました。
これはだいたい冷蔵庫の野菜室の温度です。
この冷気にずっと当たり続けるのは辛いでしょう。
体がクールダウンしたら、風も止まれば良いと思うんですけど、なかなかそうはならない。
そこでエアコンから出る直風をブロックする方法があります!
エアコンの直風をさえぎる
おばあちゃんの介護部屋では、エアコンのすぐ下に自作の風よけを設置しています。
この風よけを設置することで、おばあちゃんも嫌がらずにエアコンを使えるようになりました。
食事の介助をしている、父や僕も冷風にさらされないので効果を感じています。
それに我が家にくる訪問看護さんや施設の職員さんも「これいい!」と評判です。
こんな感じで直風さえかからなければ不快感はかなり減ることがわかりました。
でも自作できる人ばかりではないので、市販品でも良さそうな商品があったので紹介してみます。
エアコン本体に取り付ける風よけを使う
風よけを自作するのが難しいという方には、市販のエアコンカバーという商品があります。
エアコンの前にカバーを設置して、風を弱める商品です。
数年前までこういった商品はなかったのですが、やはり需要があるのでしょうね。
メーカー純正で出して欲しいくらいです。
レビューを見ていると、介護だけではなく小さい子供を育てているママさんや病院などでも利用しているみたいです。
カバーを使うときの注意点ですが、冷気がエアコンの周りにとどまりやすく、エアコンの利きが弱くなるかもしれません。
そういった場合、サーキュレーターを天井に向けて設置し、エアコン周囲の冷気をゆっくり循環させるといいですよ。
エアコンの風が苦手な高齢者でも、直接風が来なければ、エアコンを使って貰えるかも知れませんので、家族の方はぜひ一度挑戦してみてください!
そもそも暑いと感じていないタイプ
高齢になると暑さを感じにくくなるという話しは聞いたことがあると思います。
外を歩いていても、盛夏なのにしっかり着込んだ高齢の方を見かけたりしますし、
若い人より「少し」鈍くなるんだろうなって想像していました。
ですが、実際は「少し」ではなく体温が上昇して意識を失うまで気が付かないくらい鈍いのです。
つまり、それだけ危険ということです。
2019年の東京消防庁が発表した熱中症の救急搬送に係るデータを要約すると、
熱中症で救急搬送される人の約半分(53%)は65歳以上の高齢者です。
さらに熱中症の発生場所で一番多いのが自宅を含む居住場所(全体の40%)となっています。
引用:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/202005/heat.html
このデータからも自宅で熱中症になる高齢者がとても多いということがわかります。
本来であれば「どうして自宅にいるのに熱中症になるのか?」「エアコンなり扇風機を使えば良いじゃないか?」と疑問に思いますよね。
そのことについて我が家にくる訪問看護師さんがこんな話をしていました。
訪問先の高齢者の方で、夏でも部屋を閉め切って冬用の厚い布団で寝ている方が居てね。
「暑くないの?」と聞くと「暑くない」と答えるけど、熱を計ると37℃を超えているから、私がいる間だけでも窓を開けさせてもらっている。
この話を聞いたときは驚きました。
僕も高齢者が暑さを感じにくいという情報は知っていたのですが、まさか体温が上がっていても全く気が付かない程とは思わなかったのです。
こうなるともう本人による室温管理は難しいレベルだと考えてください。
家族やヘルパーさんによる体温(室温)管理が必要な状態です。
介護区分においても要支援や要介護が付くかも知れません。
実際に訪問看護や介護ヘルパーさんは、夏になると要介護者のお宅に訪問して体温管理に積極的に関わるようになります。
それが命を守ることに繋がるからです。
ここからは家族にもエアコンによる室温管理に参加して貰うことを前提にお話ししたいと思います。
部屋に温度計を設置する
本人には暑さが分かりにくいため、エアコンを点けるきっかけが必要になります。
そこで客観的に暑さを知ってもらうために、温度計を設置することをおすすめします。
温度計を使うメリットは2つあります。
温度計を設置するメリットその1
室温を数字で知ることができる。
暑さを感じにくくなっていても、数字が読めて理解できれば、室温からエアコンを使うか判断できるからです。
「自分は暑くないけど、室温が25度を超えたらエアコンをつけるように言われているから」とエアコンを使うきっかけにして貰うためです。
温度計を設置するメリットその2
エアコンの効き具合を確認することができる。
エアコンの設定温度が26℃だったとしても、実際に室温が26℃になっているとは限りません。
特に暑い日ほど、設定温度と実際の室温の差が出やすいのです。
健康な人であれば体感温度から「もうちょっと設定温度を下げよう」とか「上げよう」と温度を変えることもできますが、暑さを感じにくくなってしまった高齢者が適切に温度を変えることは難しいでしょう。
そこは家族がお手伝いをして、室温が適温になるようにエアコンの設定温度を調節してあげてください。
家族がエアコンを遠隔操作する
先ほど家族がエアコンの設定温度に気を遣うようにという話をしましたが、
そうは言っても、家族だって会社に行ったり出かけたりするわけで、ずっと家にいれないと思います。
そこでエアコンを遠隔操作するアプリを使う方法があります。
最近のエアコンにはスマートフォンアプリでエアコンの運転・停止や設定温度や風向きなどを操作できるものがあります。
そのためにはアプリ対応のエアコンと無線ルーター、インターネット環境が必要となりますが、環境が整えば外出先からでもエアコンの管理が出来るようになります。
遠くに居ながらでもエアコンの温度を管理できるということです!
さらにネットワークカメラを設置することで、外出先からも部屋の様子も知ることができます。
そうなると、かなり見守りがしやすくなります。
ここまでお話しして、アプリの解説をしないのは申し訳ないですが、
メーカーごとに仕様がが異なるため、エアコンアプリについて詳しく知りたい方は各エアコンメーカーのページを覗いてみてください。
下にリンクを貼っておきますね。
エアコンメーカー各社のアプリページ
パナソニック エオリア アプリ
https://panasonic.jp/aircon/app.html
ダイキン スマートアプリ
https://www.daikinaircon.com/app/roomaircon/feature.html
日立 白くまくん アプリ
https://kadenfan.hitachi.co.jp/ra/app2/index.html
東芝 IoLIFE
https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/living/iolife/app/guide_ac.html
富士通 どこでもエアコン
https://www.fujitsu-general.com/jp/products/aircon/sp_app/index.html
三菱電機 ME.App
https://www.mitsubishielectric.co.jp/consumer/application/
ちなみにアプリ対応エアコンですが、すでに使用しているエアコンでも2018年以降のモデルであれば、対応している可能性がありますので調べてみてください。
まとめ
「エアコンを使ってくれない親を3タイプに分けて攻略する方法」についてお話ししてきましたが、高齢の親がエアコンを使ってくれなくて困っている家族って意外と多いんですよね。
そして本人が暑さを感じにくくなってきたら、家族が積極的に関わって大切な命を守ってください。
熱中症は命に関わることです。
この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。